いくつかの折々の手紙

哲学などに関わる軽い読み物

正月特別企画:自己紹介

 これを書いている今、正月休みなのですが、暇を持て余してしまいました。何か書こうと思うのですが、よいネタがありません。そこで、自分のことについて語ろう、自己紹介をしよう、と思い立ちました。

 

〇僕の生まれ

 悪魔が地上を歩き回り、ふらついてきたように、僕はこの世にふらつきながらやってきた。夜が怖ろしい僕は、夜を避けようとして逆に夜にばかり生きていたような気がします。

 日本の北部にある、A県で僕は生まれました。ご存じの通り、A県は悪魔と鬼の国です(その証拠に、A県A市では、真夏になると鬼と鬼を退治する戦士とが地上を練り歩きます。悪魔はというと、面倒なのでビールを飲んでいます)。その地で僕は、二つのことを学びました。人間は愚かだということと、人間は愚かではないということです。この二つは矛盾していますね? 矛盾許容論理を採用していなかったので、僕はこの教えからすべてのものを得ました。しかしこのとき僕は知らなかったのです、何が導けるかということと同じくらい、何が導けないかということも大事なのだと。

 

〇僕の大学時代

 僕は大学に進学するために日本の首都Tにやってきました。Tにはたくさん優れたものがあると聞いていましたが、僕が実感できたのは、町中華のレベルが高いということと、本屋が大きくてなんでもあるということぐらいです。

 僕の友人の――友人だった――Mさんの話をさせてほしい。僕は哲学を勉強していたのですが、Mさんもそうだった。Mさんはすごく賢くて、すごく生きづらそうだった。なんと言うか、本当は彼は完全に均された土地からなる美しい国に住むべきなのに、この世がでこぼこしているせいで、彼は余計な苦労をしなければならないという感じだった。彼も僕同様に院試を受けて合格したのですが、自分は年をとっていて、新卒で採用してもらえるのは今だけだからと言って、就職しました。その年の夏に一回彼と会って、おそばを食べましたが、それ以来彼とは会っていない。連絡がつかない。彼はどこかに行ってしまった。

 そうこうしているうちに、僕も心身のバランスを崩しました。しかしこれは面倒なので割愛する。

 僕は哲学の勉強をしていた、と言いましたね。僕は、自分は夢を見ていないと示すにはどうすればよいか、ということを研究していました。変な研究ですね。こんな研究をしていたからでしょう、僕はだんだん夢と現実の区別がつかなくなりました。夢の中で、僕はベーブ・ルースと出会いました。しかし僕は英語が話せないので、だいぶ彼に迷惑をかけてしまいました。最終的には僕がスプーン曲げを披露したため、打ち解けることができました。わあ、こいつは魔法みたいだね、彼は言いました。まあね、僕は毎日哲学を勉強しているからね。僕はこの夢は論文に使えると思って、論文に書いたのですが、先生方の評価は厳しかった。アメリカ人とは話すな! って言ったんです。戦時中みたいですね。夢くらい自由に見せてくれていいのにね。

 

〇ついに就職する

 というわけで、僕はベーブ・ルース修士論文を書き上げ、都内のIT企業に就職しました。とは言っても、僕はぜんぜんコンピュータを使えなかったので、まずプログラミングの勉強をしました。なんか知らんけど、僕はこういうの好きだなと思いました(他人が書いたプログラムを読むのは、割とテクストの精読に近い気がします。書くのはまた別かもしれませんが)。

 ただ、僕は夢と現実の区別がつかない男ですから、いろいろな失敗もしました。特に、朝起きることができず、何回も遅刻しました。こんなに遅刻しても給料を払ってくれるのですから、おとなというのはめちゃくちゃ優しいです。ただ、優しさにも限界があったみたいで、おまえくびね、と言われてしまいました。まあ、こうなるとは分かっていたから、僕はぜんぜんショックは受けなかった。ただ、どうやってお金を稼ごうか、ということは悩んでいます。夢を見るのにも金が必要なときがあるから。

 というわけで、しばらくアルバイトをしながら、食っていくことにしました。

 

〇総論

 僕は時々、悪について考えます。弱さに興味がある人はけっこういるけれど、悪に興味を持ち、また悪を理解しようとする人は少ないように思います(僕が会ったことがないだけかもしれません)。悪は、表面的には糾弾すべきだが、裏で、こっそり生きていける道を用意しておくべきだ、というのが、今のところの僕の考えです。

 なんで僕は悪に興味を持っているのか。初めにも書きましたが、僕は自分の生に、何となくしるしがついているような気がする。たぶん、役に立たない羊を目立たせるためのしるしでしょう。このしるしへの認知が、僕に悪への興味を持たせるのだと思います。